油屋町の家

敷地は、長崎の昔ながらの街並みを残す通りに面する、短冊形の所詮うなぎの寝床。2階LDKは、トップライトの光に満ち、狭い間口ながら、奥行きを生かし最大限の広がりを得ている。
通りに向かって天井をせり上げ、大きな開口を設けたその先に、国宝「崇福寺」境内の縁を望み、おくんちの折にはバルコニーから傘鉾行列を眺めることができる。
僅かながら小庭に緑を配し、視線の抜けと採光通風を図っている。

住宅の一室を改装し設えた小さな庵。
「光・外部との曖昧な関係」を主題とする聴雨庵と、「翳り・奥」をテーマにした対の空間です。
客座を覆う天井は、薄竹を編んだ軽やかな籠のような趣。小間にふさわしい親密さと、広がりを感じさせます。
床の間は、床柱を地板の角隅ではなく、内側に引いて立て、地板が床の領域から外に広がり出る原叟床。このわずかな“ずれ”が、空間に奥行きと静かな緊張感をもたらします。
小間としての設えながら、その求心的な精神性に寄りすぎることなく、むしろ広間的なおおらかさと翳りに、人の心がうちとけ、つどい合える茶室のあり様を求めました。
――“洽”(あまねくうるおす)

「海と緑に浮かぶ黒い木箱」

敷地は、樹木の生い茂る急峻な下り南斜面。
木立の間を透けて船越湾とその先には雷山山系を望むことができた。
その景色を最大限に生かした住居兼仕事場である。

1階鉄筋コンクリート造の箱に、2階片流れ屋根の木造部が4方をオーバーハングして載る。
道路際の既存樹を可能な限り残し、その奥に黒い木箱を樹林に浮かせることにより、道路沿いの景観の保存に努めると
同時に、内部にあっては無二の眺望を獲得している。
入口へは木洩れ日の中、板壁と樹間のブリッジにより至る。

内部は、低い庇とバルコニーの水平ラインにより切り取られた穏やかな内海、眼下に広がる木々の景色に繋がる豊かな
開放感と、木質と漆喰による柔らかで包まれるような安心感のある空間となっている。

樹林に突き出し浮遊感あふれる居間スペース・浴室、春には満開の桜が手にとれるライブラリー、木立の間の仕事場
などなど、各スペースからは、それぞれ様々な海、緑、空を眺め、感じ、飽くことのない時を過ごすことができる。

竣工後6年が経ち周囲の景観、木々は元の姿に戻り、低く抑えた外観は、樹影に見え隠れて静かに凛として佇んでいる。