西町の家

西町(旧地名)は黒田藩士の住まいが多くあった地。今も寺や墓地、路地に往時が僅かに偲ばれる。

クライアントは祖母、子供2人の5人家族。日々の暮らしの中、家族が何気無く顔を合わせ、声を掛け、気配を感じることが出来きること、また柔らかな光に満たされ、風が隈なく抜ける家を望んだ。

家中央に吹き抜け、中庭を設け、各空間は様々な開口によって繋がり、刻々と移り行く自然を採り入れる。

ダイニングの高窓からは、子供の頃より遊び親しんだ寺の山門を見ることが出来る。

「 江戸時代からの建物を店舗へ改築 」

秋月は武家屋敷跡、町家建築等が周囲の豊かな自然・田園風景と相俟って、城下町らしい歴史的風致を今なお残している。

計画建物は、江戸時代後期にこの地に移築された長屋門。代々に亘り増改築を繰り返し住み続けてきた。施主は子供の頃までこの家に暮らし、現在は西半分をアトリエとして使用している。改築は、活かされなくなってしまった東半分の玄関・和室部分を、魅力ある店舗(ワインセレクトショップ)へと甦らせることであった。

座敷以外を叩き仕上げの土間、奥にギャラリーを併設して、ミニコンサート等も行える多目的な空間とした。天井・床を取り払い、柱・梁を注意深く補修、追加しながら、遠い歴史を感じながらも現代的な感性にも応えることのできる、包容力と強さのある空間の在り様を目指した。

敷地は南に広大なカルデラとそれを取巻く外輪山、北には峰の連なる阿蘇の山々を望み、四季折々・朝な夕なに様々な表情を見ることができる。

構成はヴォリューム感を抑え、屋根・棟の連なりが背景の山々と呼応する分棟型とした。
棟と棟の配置により、内外からの視線を制御し、やや囲われ感のある空間、暖かな空間、日陰の空間・・・、など折々のための心地よい居場所を設えている。

周りの自然を様々に採り入れ交錯しながら連続する内外空間は、日々趣きの異なる景色を感じながら、住まいとしての落ち着きのある場を生み出している。