戸畑の家
「 くろご 」
敷地は直交する幹線道路角地。クライアントは道路拡張により敷地の半分を失うこととなった。
別の地へ、とも考えたが住み慣れたこの地を去りがたかった。
勾配屋根、黒い鋼板により帯状に覆われた外観はシンプルでモノシリックであると同時に典型的な住宅のイメージを持つ。
道路側は騒音、プライバシーを考慮し閉じた形になっているが、内部は、住宅地側に大きく開いた開口部及びトップライトからの光に満ち、暖かく、包まれるような居心地の良い空間となっている。
「 伝統 」と「 新しさ 」
福岡県醤油醸造協同組合工場は県内醤油メーカーの醤油原液(生揚)のほとんどを生産し、各工場に配送する。各工場はそれぞれの好みにあった味に調整し、出荷している。福岡県醤油会館は、醸造組合40周年事業として工場に隣接する敷地に計画された。
この建物は、長い歴史によって培われた「伝統」を受け継ぎ、未来に向けた「新しい」まなざしを育てる場であると考える。その理念を木構造として表現した。すなわち伝統的な木の優しい素材感と、集成材と鉄筋を用いたラーメン工法による合理的な新しさである。外観は、交差する2つのボリューム(「蔵」と「縁」を象徴する)と建物を貫く板塀でこの事を表現した。
木構造を直截に表す均等な架構は、明るく伸びやかな空間を獲得し、シンプルな構成でありながらも、力強く豊かな表情を持つ。また少ない部材種、単純な工法によりローコスト、短工期を図った。
各部屋は断片的にならないよう、ラウンジを中心に建物が一体に繋がる計画とし、様々なかたちでテラスや庭に面し、光や風、水といった自然を採り入れる。
敷地の周囲を1mほど盛り上げ植栽を施し、道路に沿った土手のようなイメージの景観としている。敷地の高低差を調整すると同時に道路との緩衝ゾーンとなっており、交通量の多い道路に対し、建物内部からは敷地がやや窪んだな印象となり、落ち着いた執務環境を作っている。
外気導入に地中熱利用換気システムを用いる等、環境に対しての負荷の軽減を図った。