《2014年9月》 木造2階建 / 敷地:171.86㎡ 延床:132.55㎡
施工 有限会社 筑羽工務店
写真 Blitz studio / (※)柳瀬 真澄
【 第9回 建築九州賞 佳作作品 】
子育てを終えた夫婦のための終の棲家である。
敷地は、福岡市内中心部、閑静で緑豊かな小高い丘上の分譲地。
南隣地は既に、東隣地も将来は境界いっぱいに住宅が建つことが予想されるが、2階高さからは西側の緑地越しに景観が開け、北側は隣地の緑と遠景を借景として間近に感じることができる。
設計に際しては、西日を制御しつつこの景観と光を採り入れる開口と壁の配置、在り方に特に注力した。
構成はクライアントの要望に従い、1階に主人室、和室、水回り、2階にLDKと夫人室である。主人室は仕事部屋兼寝室であり、趣味との関わりで水回りに近い。夫人室はLDKと繋がる。和室は夫人がお茶を嗜み、ゲストルームにも使われる。無駄なくコンパクトなプランの総2階建にシンプルに切妻屋根を載せ、慎ましい佇まいとなるよう図った。
玄関ポーチよりリビングまでを、螺旋状の動線とすることにより、様々なシークエンスが展開し、実際の広さ以上の伸びやかさを感じることが出来るよう意図した。2階主室は、矩形の平面に、細身の化粧梁を掛け渡し、表した。西側の窓は出窓とし、北側窓にはベンチを設えた。この彫の深い開口は風景を額縁のように切り取ると同時に、空間に奥行を与える。ダイニングテーブルからは西の遠景を望み、ベンチは順光の反射光に柔らかく満たされる等、心地よい居場所を整えている。
僅かに茶味を帯びた漆喰壁と木質に覆われた空間は、明る過ぎず、暗過ぎず、程よい明暗と陰翳の中、時に閑かに、時に客を迎え、思い思いに穏やかなときを過ごすことができる。
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